InterView07 Xiao Mage [Xiao Mage & Cheng Zi Workshop] from Beijing

後藤:せっかくの機会なので、質問を受け付けられたらと思うのですが、先ほど、シャオマグさんが「後藤さんからの質問の答えです」と言っていたことに対して、もう少し説明します。このトークが始まる前に、シャオマグさんと、typographics ti:誌の北京号の表紙デザインを手がけてくれたガン・ユウというデザイナーが中国版のtwitter上でけんかをしていたと聞いたんですね。そのゴシップが聞きたかったのではなくて、中国のデザイナーは、ネット上などでディスカッションをするのか聞きかったのです。また、北京は大きな街なので、どういうコミュニティがあるのかを知りたかった。仲の良し悪しはあると思いますが、どういうつながりがあるのかとか。

シャオマグ:北京のグラフィックデザイナーは、大抵みんな静かです。忙しくて、あまり家から出ずにデザインしています。だから、実際に交流する機会がないのです。ガン・ユウと知り合ったのは、同じクライアントと仕事をしたつながりです。

後藤:けんかをふっかけられた感じらしくて、さっき見せてもらっていた9つの建築と9人の小説家の本の時に、昔の図形を使うスタイルに対して批判があったらしいんですが、彼女はみんなの財産だから、デザイナーが尊敬して使っていけばいいのではないかと言っていました。

質問者1:あまりパソコンを使わないと聞いたのですが、デザインに関わることで、どこまでパソコンを使わないのかと、本の制作をするにあたって、旦那さん以外に一緒に作業する人、チームなどありますか?

シャオマグ:コンピュータで作業していますよ。ただ、Webはあまり使いません。あまり自分のWebもつくらなくて、自分を売り出すことをあまりしていません。なので、Webやfacebookにはあまり感心がないです。Webにはまってしまったら作業時間がなくなるので、使わないようにしていますね。本のデザインも、基本的には2人で作業しています。今のデザイナーはあまりコンピュータから離れないんじゃないでしょうか。

後藤:今の質問に関連して、2人でデザインをやる上での決まりごとはありますか? それとも、フレキシブルにやっているのでしょうか?

シャオマグ:あまり分けていなくて、時間があるほうがやりますね。大学生から一緒なので、お互いの考え方もわかっていますし。あまりそういう決まりごとはないです。

質問者2:ここのトーク自体が最後なので、後藤さんに聞いてみたいのですが、全7回やった上で見えてきた、アジアの特徴みたいなものってありますか?

後藤:僕の意見でいうと、香港のジェイヴィンに、『デザイン360°』のインタビューで同じ質問をされたのですが、若干の違いや、流行の違いはあるんですけど、インターネットの影響からか、国による違いを正直感じませんでした。アジアだからどうだということはなくなってきている。細分化してみた時に、唯一違うと言えるのは、タイポグラフィです。文字の部分でしか、オリジナリティやローカリティはないのではないかとさえ思いました。そういった点で言うと、シンガポールはローカリティが見いだしにくいですね。だからおもしろみがないと言う訳ではないのですが、シンガポールらしいデザインと言われると、わからないです。

原田:僕は、バンコクとシンガポールには行ってないんですが、後藤さんが言うように地域差は思っている以上になくて、タイポグラフィで異なるというお話でしたが、僕らが呼んでいるデザイナーには、そういうところの差がない気がします。たとえば、英語を使ったり、それを現地の言葉とバイリンガルにしたり、今のグローバリズムのなかで、どういうふうにデザイナーが生きるかとなったときに、英語というのは、非常に重要なファクターとなっているなと思いました。しかしながら、ディティールに、まちごとの精神性みたいなものが出ている。シャオマグさんのディティールには、地域における出版の限界やまちのタイポグラフィの状況も合わせたものが出てきている。それは、非常に小さなことの積み上げが生んでいるんじゃないかと思いました。

質問者2:もうひとつ、今回の企画で、ネットワークのようなものが生まれたと思うので、今後もそれを生かした活動の予定はありますか?

後藤:各都市に良いデザイナーはたくさんいました。今回お呼びしたデザイナーは特に、今後もつながりを持っていきたいと考えているので、僕個人としては、展覧会をやるだけというより、こうしてトークなど、海外のデザイナーが毎週来るような状況をつくることまでが企画されていて、そこでつながりが生まれていければいいなと思っています。そもそもの意図としては、何かをつくるというよりも、何かが起きてほしいという狙いでした。僕たちとしては、それぞれの都市で、展示やイベントが行われるようになったらいいなと思っています。香港では、依頼する前から動いてくれていて、8月に巡回展が行われることがほぼ決まっています。深圳やバンコクでも予定がありますね。シンガポールの彼は、政府に顔が利くので、政府に言っておくと言ってました(笑)。あとは、自然発生的に起こればいいなと思っているので、少しずつそういうつながりが増えていって、今は日本のタイポグラフィ協会だけでつくっていますが、大きくてゆるいネットワークができていけばいいなというのが願いです。長時間になってしまいましたが、シャオマグさん、ありがとうございました。通訳を担当してくれた王さんもありがとうございました。

編集記録
editorial studio MUESUM(永江大)、南部沙智子
写真記録
Cahier (多々良直治)