InterView06 Aaron Nieh [Aaron Nieh Workshop] from Taipei
アーロン:もう、ほとんど友だちかどうかわからない状態ですけどね(笑)。では今から、私の主な仕事を紹介します。本の装丁やCDのパッケージ、演劇や音楽のパンフレットなどをつくっています。
日本の状況はわかりませんが、台湾のブックデザインは、予算がすごく少なくて、これだけで食べていくのは相当難しいのです。だから私の場合は、CDの仕事を中心にお金を稼いでいます。ただ、ブックデザインは自由にデザインできるので、お金のためではなく、実験的なデザインをするための場としてやっています。
後藤:台湾には、出版社と社員契約しているような、専属のデザイナーはいるのですか?
アーロン:もちろんインハウスデザイナーも何人かいますが、大事なプロジェクトに関しては、基本的に、外部のスタジオに頼むことがほとんどですね。
CDの仕事は、マーケティングのプランもあるし、アーティストのもつイメージみたいなものもあり、制約があるなかでやらなければならないんです。それに比べると、本の仕事は、抽象的な表現など、いろいろなことが試せるので、デザイナーにとっては楽園的な仕事だと考えています。
日本の小説家の翻訳本をデザインすることもあります。これは、北京の出版社に依頼された、京極夏彦さんが書いた小説の、中国マーケット用の表紙です。なので、日本で売っているものとは全然違います。台湾では、日本と同じデザインの翻訳版が売られています。中国と台湾には、特有の出版システムがあり、先に台湾で日本の翻訳本が出版され、その後中国から装丁を依頼される場合は、似たようなデザインにならないよう言われることがほとんどです。
これは、宮本輝さんの作品を装丁したもので、写真は表紙とカバーです。
このノートは、台湾の誠品書店という本屋とのコラボレーションでデザインしたものです。誠品書店で99台湾ドル以上本を買うと、ノートが1冊ついてくるというプロジェクトでした。
原田:誠品書店は、日本の雑誌や、文具なども扱っていて、24時間営業している書店ですね。
後藤:大阪のスタンダードブックストアに似ていますが、そこよりかなり大きい書店です。代官山にあるTSUTAYAにも似ている、台湾ではポピュラーな本屋ですね。
アーロン:こういうプロジェクトのときに、デザイナーがノートをつくることはたくさんあると思いますが、変わったかたちやデザインのものをつくる人がいなかったので、変わったことに挑戦したかったんです。でも、製本業者や印刷業者は随分困っていましたね(笑)。
日本人のクリエイターとも仕事をしています。日本人の写真家とつくったZINEが、はじめてのコラボレーションでした。
これは映画『Fight Club』の原作本のデザインです。8年前にも一度デザインをしたのですが、最初に出版されたときより、社会の状況や、個人の感覚なども変わってきているので、出版社のほうから、もう一度デザインをし直さないかという話になり、こういうふうに再度デザインしました。