InterView05 Hei Yiyang[SenseTeam] from Shenzhen
今から作品を紹介します。これは2005年の作品です。このとき事務所のメンバーは4、5人しかいませんでした。これは、ある建築会社から依頼された仕事です。中国の5つの都市で巡回展をするプロジェクトです。企画をはじめ、グラフィック、空間デザイン、広告などを手がけました。企画から約1年取り組みました。この仕事は自分にとって勉強になりました。
後藤:それまではグラフィックデザインだけしかやっていなかったんですか?
ヘイ:本やポスターの仕事が主でした。この展覧会の名前は「都市の種」。この名前には、ふたつの意味があります。ひとつは、自分の建築を都市に蒔いていくという意味です。ふたつ目は5つの都市の巡回展なので、それぞれの都市に種をまくように巡回するという意味です。このタイポグラフィは、展覧会の名前が決まってから考え、スピード感のある文字にデザインしました。LEDのライトやレシートで印字される文字、コンピュータで打ったような文字など、そのイメージからこのようなスピードを表す文字を考えました。
この展覧会では、グラフィックと建築を、色によってつなげています。グラフィックのツールにはクラフト紙を使い、建築には、建築家がよくつかっているMDFを使っているんです。そのふたつは、色が良く似ています。クラフト紙とMDFはグラフィックと建築においてよく使われる材質です。
後藤:原田さんなどはグラフィックデザインのほか、企画や空間デザインもされていますが、例えば、日本ではWebができなければ外注をしたりしています。そうではなくすべて引き受けているのは、中国ではそういう領域を横断することが当たり前なのでしょうか?
ヘイ:まずは、さまざまな分野の仕事を大胆に任せてくれたこのクライアントさんに感謝ですね。この仕事のためにさまざまな分野のことを勉強しました。展示空間をデザインしたときもわからないことがあって、よく現場の人と相談しながら進めていました。時間もお金もたくさんかけましたね。中国には「蟹を最初に食べる人は挑戦者」という意味のことわざがあります。蟹は怖いし食べづらいけれど、食べたら美味しい。そういった姿勢でいることを常に意識しています。

この仕事は、深圳グラフィックデザイン協会に依頼された仕事です。あまり予算がなかったので、サポートのような感じでやっています。けれど、自由にできる仕事です。この仕事では、若者のパワーを感じさせたいと思いました。展覧会名は『X』展。何が起きるかわからないので、『X』とつけています。

この仕事は、自分たちで会場の手配をしなければなりませんでした。会場には改装する前のバーがあり、照明も入っていない状態だったので、蛍光灯を使ったデザインを考えました。今まで見せた、グラフィックは平面的なものが多いですが、今回は蛍光灯を使って文字をつくりました。異なる長さの蛍光灯を使い、中国語の漢字とアルファベットをつくったんです。
展覧会は予算がなくデザイナーたちを展覧会に招待することができなかったので、それぞれのデザイナーの名前をつくり、深圳のあちこちに飾りしました。ここは魚を売っている市場です。ほかにも地下道や浮浪者が住んでいるところ、工事現場など。深圳に直接来ることのできなかったデザイナーは、その都市のなかで名前だけでも紹介できるようにしました。
後藤:以前取材したとき、このアイデアがすばらしいと思いました。単純に蛍光灯で文字をつくるのではなく、会場となる現場の何もないところに明かりを灯していくというアイデアからスタートしている。更にポスターをつくるときは、街なかに仕掛けて写真を撮っていく。これを見た人が写真を撮ってWebへアップすることで、展示がはじまる前から口コミで広まっていきます。コンセプトから最後の落とし込む段階まで内容が一貫していると思いました。あとジェイヴィンが言っていたのですが、深圳という街は、30年くらい前までは漁村だったそうです。この30年で急速に成長して、今はほかの土地からきた移民がほとんど。働いている人たちが現地の人ではない深圳という街で、外のデザイナーの名前があちらこちらに展示されているのは、本当に全部考えていたのかと思うほどすごい。
ヘイ:この作品をつくるときに、この1年でここまでできるとは考えていなかったんです。最初はどういうふうにこの都市と紙とが影響していくかを考えていました。また、5年後、この作品がどう見えるのかをイメージすることも重要でした。僕はグラフィックデザインの仕事が終わった後、必ず反省して、見返す機会をつくっています。仕事が決められた期間に終わっても、繰り返し反省する。そしてその作品の命を伸ばしていくんですね。グラフィックデザインの作品は、照明のようにすぐ消えてしまうので、本当はもっと灯りを長く保つようにしたい。これはグラフィックデザインとアートの違いでもあります。グラフィックデザインは社会とクライアントがいて成り立っていますが、アートは作品の制作が終わっても、まだ見返す時間がある。
後藤:デザインは基本的に、そのプロジェクトごとで終わってしまうけれど、反省したり、振り返る作業をヘイさんは重視しているということですね。
ヘイ:いつも繰り返し見ては、何かできることはないかとよく考えています。作品は自分の子どものように、大きく育てたいんです。

展覧会の名前は『Social Energy』。オランダのデザインのエネルギーを表すために名付けたものです。巡回展なので、長期間のプロジェクトになり、このときはスピーディーに複雑な仕事ができるよう、事務所のメンバーを10人以上増やしました。美術館は都心に位置し、主にデザイン関連のものを展示しています。建物の外観は六角形のガラス面の組み合わせになっていて、その六角形を使って文字のデザインを考えました。文字をつくる行為というのは、DNAによく似ています。ご飯を食べるとエネルギーになりますよね。デザイナーが活動する際に、そのエネルギーがどこから出てくるかというと、デザイナーが生まれた場所や、生活している地域によって異なります。それぞれ、DNAのつくられ方は違っていて、コピーはできません。だからこのDNA文字を展覧会のシンボルにしたかったんです。
また照明のデザインも手がけました。中国は製造業が多いので、風船に照明を付けることのできるメーカーを探すことも難しくありませんでした。今回協力してもらったのは、クリスマスに使う風船をつくっている会社です。この年は、その会社の仕事があまりなかったらしく、費用を押さえてつくることができました。この照明付きの風船を建物に設置したり、全体のサインやポスターにも活用したんです。展覧会の名前である『Social Energy』を中国語に翻訳したときの4つの文字を使って、木の上や水上など自然と混ざるような見せ方で設置しました。中国では、自然からさまざまなエネルギーを得ています。その自然環境を使って、オランダのデザインと対比することができると考えました。
この照明は展示会場の照明にも使っています。デザインを単なる飾りにするのではなく、地域ごとに担当者と密な打ち合わせを重ねたからこそ、さまざまな反響を得ることができました。この仕事のおかげで、グラフィックの仕事に対して、新しい可能性を発見することができたように思います。

これは2007年につくった書籍の編集の仕事で、セルフプロジェクトです。まず、ブランディングについての資料を集めて、1冊の本にまとめました。本の名前は『Big Business』。この本は内容が固いので、若者が気楽な感じでイメージできるよう、落書きのような文字を書きました。これはポスターで、カテゴリーにわけて、文字でイラストを描いています。

『Big Business』に次の号ではブランディングがどれくらい価値観の影響を受けるのかを考えました。わかったことは、やはりお金の影響は大きいということです。そこで実際の世界中のお金を使って、人の顔をつくりました。まだいろんなお金を使って顔をつくっています。

これは新しいプロジェクトで、建築のコンペです。カテゴリーが分かれていて、一戸建て、町の計画、都市の計画の3つ。一戸建てがたくさんあると町になり、さらにそれを組み合わせていくと都市になる。その変化をグラフィックで表現しています。ほかにポスター、賞状、スタッフ証、カタログやDMなどもデザインしました。この建物の用途は公営団地で、それをどうやって計画するかのコンペでした。

ヘイ:これは、東南アジアの紙会社から依頼され、ひとつ前に話したものはセルフプロジェクトです。これは、紙会社と協力してタイやマレーシア、シンガポールのデザイナーたちの作品を見せるためにつくったものです。予算がたくさんあったので、ひとつ前にお話したものよりも楽しく作業ができたように思います。ただ、今回はカレンダーの役割をきちんと果たすものになっています。
後藤:この深圳のイメージは『typographics ti誌』の表紙でも使用させてもらいましたね。

ヘイ:この仕事では、1つのプログラムで、7つの都市があり、深圳から80名のデザイン関係者が参加しました。グラフィックデザイナー、建築家、イラストレーター、企画をする人、アーティストなど5つの仕事に携わる人が集まりました。
この展示は、自分の作品を飾るのではなく、深圳という都市のデザイナーの状況を表したかったんです。深圳のデザイナーは、今の状況に対してどんどん変化しています。一般の方、消費者がどのようにデザイナーを理解できるか。デザイナーは朝から晩まで何をしていて、自分の時間があるのか、デザイナーは頑張って仕事をすることでほしいものを手に入れることができるのかなど、周りのデザイナーたちにも聞きたかった。なので、アンケートを通してデザインをしている人たちの、現在の状況を知りたかったんです。
自分が生まれた日や場所、どこで働いているか、デザインの教訓なども書いてもらっています。80人の中に僕の会社のメンバーも入っています。

このイベントを通じてプロジェクトが広がるようになりました。実は生活とデザインに関しては正解と言えるものはありません。これからは、もっと異なる国や地域で同じ質問をしていきたいと思っています。そこでどんどん新しい発見ができたらいいなと考えています。今まで書いていただいたものを今回のdddでは展示していて、それによって深圳のことをよくわかってもらえたら嬉しいです。



