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InterView04 Sulki Choi and Min Choi [Sulki & Min] from Seoul

スルキ:デザインというのは、質問に答えることだと思います。しかし、実際に自分たちで動いてみると、さらに疑問が増えていくんですね。それを実感したプロジェクトについてお話します。香港にある「SALT」のコーポレートタイプフェイスをデザインしました。SALTというVIは、「Project Projects」というニューヨークの会社によってつくられています。

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タイプフェイスは、そのProject Projectsが手がけているのですが、年に4回、「S」「A」「L」「T」を更新していくという仕組みを彼らが提案しています。そこで、私たちにも声をかけてもらったんです。彼らが提案するタイプフェイスは、キュレーション的なプロセスを含んでいて、文字自体もアップデートしていくし、誰を招待して、どんなタイプフェイスをデザインしてもらうか、そこに意図があります。つまり、タイプフェイス自体にそういうプログラムが含まれており、VI自体もどんどん発展していく仕組みです。

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Project Projectsがつくった初代のタイプフェイスは「Kraliçe Open」と言います。2代目はベルギーのデザイナーによる「Kraliçe Marble」。

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これは、私たちが担当した3番目のフォントデザインです。自由になんでもやってもいいということだったので、まずはグレーのフォントをつくりました。

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Photoshopの機能を使い、ハーフスキンでもう1回グレーのトーンをつくりました。

ミン:プロセス自体は機能的でしたが、実際には検討する時間はあまりなくて、とにかく手を進めるしかありませんでした。デザイン自体は、簡単でしたが、タイトルをつけることには時間を要しましたね。その結果、さまざまなアイデアが出てきました。

背景を黒にすると、文字自体は白にも見えるので、もしかしたら「Kraliçe SALT」のほうがいいかもしれない。だけど、コンプラインもそんなに見えないから、「Kraliçe Sponge」にしたほうがいいかもしれない。はたまた、ぶれているようにも見えるから、「Kraliçe Foggy」と呼んだほうがいいのかも。煙のようにも見えるし、「Kraliçe Smog」にしたほうがいいのかもしれない。名前をつけるプロセスは、いろいろ考えられます。そばかすのように見えるから、「Kraliçe Sesame」とか。もしかしたら、全部使ってもいいかもしれないと考えていきました。

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ファイルに名前を入れるとしたら、長いものは使えません。ただ、「Kraliçe Gray」という名前はピンとこなかったんです。オリジナルのアイデアがうまく実現したかわからなくて、どうしたらいいのだろうと、とにかくたくさん提案しました。今お見せしたスライドも、すべてクライアントに提案しています。そこで、「どうしたらいいかわからないから助けて」とはっきり言ったんですね。

その上で、クライアントにもアイデアがあれば、聞かせてほしいとお願いしました。その後も、いろんなやりとりがあったのですが、なかなか結果は出なくて、時間もなく、ローンチしないといけないというタイミングがやってきました。最終的には誰が決めたか憶えていないんですけれど、だから「不確か」という名前をつけて「Kraliçe Uncertain」という名前にしました。Webサイトにも使用されています。

後藤:名前をつけるプロセスが重要だったのは、プロジェクトとして重要だったのか、ミンさん自身がそういった判断をしたからだったのか、どちらでしょうか?

ミン:私たちが強く求めていたわけではありませんでした。だけど、フォントはつくったわけだし、名前がほしいということで自問自答を繰り返しましたね。葛藤はありましたが、ブランディングプロジェクトにおいては名前が重要だと考え、名づけも必要なプロセスであると取り組みました。

スルキ:ほかのアイデンティティプロジェクトで「BMW GUGGENHEIM LAB」というのがあります。この研究所は、移動する研究所で、世界を旅して新しいイノベーションと暮らしをインスパイアする機関です。私たちは、最初の2年間のアートディレクションを依頼されました。このロゴタイプのアイデアは、すぐに思いつきましたね。どういうものかと言うと、2つのグラフィック・アイデンティティのコンビネーションです。「LAB」の「B」はBMWのコーポレートフォント、「GUGGENHEIM」はグッゲンハイムのフォントを使っています。プロジェクト当初は「LAB」という文字だけのロゴを想定していました。

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依頼を受けた当初から、その研究所自体の変容と「移動する」という特質を踏まえて、生きているもののように変わっていくというアイデアが出ていました。ロゴだけど、いろんな変化をさせることができたらと考えたのですが、ただ変わるだけではなく、同時に意味を持たせたいと思ったんです。

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その後、さまざまな相談を経て、ロゴは空っぽのフレームにしてはどうかというアイデアが出ました。そこから、内側が人間のアイデアで埋まるような、インタラクションが作用するシステムを採用しました。内側に収まる文字は、オンラインのQ&Aフォームからのテキストを引用しています。そのロゴ自体がQ&Aからのテキストで埋まることによって完成します。例えば、「街の中の落差をどう解決するか」という問いに対して、あなたの感想や答えを入力すると、それがロゴの一部になります。人が答えを出すと、ロゴの形がちょっとずつ変わるという仕組みです。

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次のプロジェクトです。Georges Perecの『Life A User’s Manual』から引用し、展覧会のポスターを制作しました。この展示では、暮らしとデザインの新しい関係性について取り上げています。ここでは、ブルーノ・ムナーリがつくったフォトエッセイをベースに写真を構成しました。10個ほどのポーズでモデルを撮影することを提案しました。

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この写真のなかでは、モデルはブルーノ・ムナーリ自身です。そのコンテクストで遊び、コンテクストを再構築しました。このポスターの写真に写っているモデルは、韓国の若いデザイナーで、ムナーリのようにスーツではなく、ユニクロの服を着て、アームチェアではなく、無印良品の椅子でリラックスした状態を探しました。

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その写真のシリーズで、印刷物をつくりました。これが印刷した状態です。いろんな種類のリーフレット、ポスター、カタログがあります。

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ミン:これまでは、デザインの仕事を紹介してきましたが、ここからは僕たちが自費出版している「スペクテータープレス」の活動についてお話したいと思います。もともとは、自分たちが気に入っているテキストをみんなと共有したいと考えたことがきっかけでした。はじめて発行した本は、Meena Parkという韓国人アーティストの作品集です。そこから、有名なデザインの本を韓国語に訳す「Spectacle Collaboration」というプロジェクトもはじめました。

後藤:最初に、自分の好きなデザイナーの本を紹介しようというきっかけだったのが、韓国のアーティストを紹介しようと転換したのはなぜですか?

スルキ:特に重要なつながりがあるわけではなく、同時にはじまったような感じです。

ミン:いろんな出版物をつくりたかったけれど、お金がなくてつくれなかったアーティストもいました。3つのカテゴリーがあって、ひとつ目は、真面目な本。ふたつ目は、アーティストの自己紹介の本。3つ目がおもしろくて、本自体が作品になるものです。

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これは何年も継続している企画で、アーティスト・SASAの1年間の記録を毎年、本にしています。SASAは、韓国語で「44」という意味です。例えば、SASAが1年間でカップヌードルをどれだけ食べたか、どのくらいお金を使ったかなど、日々の消費の記録を集めた、まったく意味のないアニュアルレポートなんです。

原田:これは、SASAさんの作品ですか? それとも共同のプロジェクトですか?

ミン:SASA自身はもちろん違う作品もつくっているのですが、これは書籍のプロジェクトとして、コラボレーションしています。このプロジェクトでは、一緒に毎年アニュアルレポートをつくっています。

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ここには、1月に麺をどれだけ消費したかというレポートが書かれています。

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これは2冊目ですが、出版する予算がなく、ポスターだけにしました。見ていただいたら気づかれるかと思いますが、これはかなり線が太くて、統計としては真面目ではありません。意図としては、自分の消費情報を人に見せるというバカらしさを見せたいと思って、こういった表現になりました。