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InterView03 Santi Lawrachawee[Practical Design Studio] from Bangkok

サンティ:仕事でつまらなくなると、これから仕事をする中、どういうふうにしていけばいいのか自分に問うわけです。本を読んでいると、あるマニフェストを見つけました。「first things first」というマニフェストです。1964年にデザイナーのケン・ガーランドが新聞に出した声明で、最初に読んだとき、感動しました。内容は、デザイナーたちのスキルは、ただの商売のためにあるものではないと、デザイナーのリストと共に書かれています。

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後藤:僕も知らなかったのですが、1960年代に発表されたケン・ガーランドのものです。1960年代、イギリスは豊かだったため、デザイナーが商業的な活動をしているが、デザイナーが社会に対してできること、視覚伝達によって社会にどのような影響があるかについて発表した声明です。2000年に、もう一度改正されたバージョンが発表されています。

サンティ:私はどうしたらこういうことができるのかと、自分に言い聞かせました。そして、仕事をするときはお金をもらうのが目的ではないと考え始めました。役に立ち、楽しいからやるという意識を持つようになりました。考え方を変えるだけでもっとさまざまな仕事に向き合うことができる。そしてはじめたプロジェクトが、Practical Design StudioとTHE SOCIETYの協働のプロジェクトです。

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HIVやHIV感染者について、良い価値観を持つようにみんなに伝えるプロジェクトです。

後藤:HIVにたいしてどのようにアプローチするプロジェクトなのでしょうか? 啓蒙するのでしょうか?

サンティ:タイでは、政府が国民に対してHIVのイメージを強く植え付けました。HIV感染者は麻薬中毒者と同じ扱いです。でも、現状はそうではなく、母子感染してしまった人もいる。このプロジェクトは、大きく言えばアートとデザインを通じて人の考え方を変えようとするものです。最初に、Practical Design StudioとTHE SOCIETYは、「+=」というブランディングを提案しました。+=は、HIV感染者と一緒に、Tシャツやカバンなどのプロダクトをつくっているんです。販売は、生産者がHIV感染者だということは消費者に伝えず、後で発表しました。かわいそうだから、という感情で買ってほしいのではなく、デザインで買ってほしかったからです。デザイナーとしてこういう仕事に携わり、はじめて幸せを感じました。

後藤:質問がふたつあるんですが、ひとつ目にそのブランディングの提案は企業にしたのでしょうか?

サンティ:オランダから企業が来て、人を集めて行いました。

後藤:なるほど。もうひとつ質問で、これは継続的なプロジェクトですか?

サンティ:1回だけです。でも、このプロジェクトのおかげで、別のプロジェクトですが、社会に訴えかけるような仕事をしています。それが「LOVE is HERE!」というプロジェクトです。これは、聴覚障害者のコンサートのコミュニケーションデザインを行うというものです。最初はポスターをデザインしようと思い、うまく伝えられる方法を考えました。

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サンティ:映画館で撮影し、見に来る人に♡のシールを貼りました。

後藤:これはポスターから取って貼るのですか?

サンティ:ポスターからです。小さなハートのステッカーを貼って、大きなハートにしていく。コンサートホールをみると、皆ハートのステッカーを貼っていることに感動しました。たくさん持っている人はほかの人に渡す。耳の聞こえない人でも、私たちが愛をあげようとしていることをわかってくれました。これは、自分と違う人とでもコミュニケーションをとることができると気づかされたプロジェクトでした。

後藤:蛍光色が多かったですが、それは耳が聞こえない人でも見えるように、考えたものですか?

サンティ:暗いコンサートホールの中でもはっきり見えるようにするためです。

原田:タイでもそういう風な、社会問題をテーマにしてグラフィックデザイナーが仕事をしていますか?

サンティ:現在は増えましたが、当時はまだ少なかったです。ここ5、6年の間に、エコ、グリーンデザインが増えてきました。すべての会社がそのようなキャンペーンを行ったのです。デザイナーもグリーンデザイン関連の仕事に協力することができるようになりました。しかし私にとっては、それは本気で取り組む問題にはなりえませんでした。

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あるカバンがデザインされたことがきっかけで、店がエコバッグのようなものをつくり、お客さんへ渡すようになりました。良いデザインだとは思います。しかしこのデザインだと、もっと増やして、多くの人に配るしかない。「reduce」ではないんです。本当は環境問題解決のためにはつくらないのが一番です。そうなると1人ひとつで良い。しかし、私はエコバッグを10個ほど持っていて、その大半をクローゼットにしまっている状況です。そんな状況でもこのような仕事を任されました。

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デパートの中で行われた展示会の空間デザインも担当したのですが、そのときは、自分が環境に対して思っていることを話すようにしました。「デザイナーは何も役に立たない」と。実際は何の役にも立たないわけです。みんなが協力することのほうが大切。

後藤:デザインだけでは何も変わらない。みんなが考えるようなデザインが必要ですよね。デザインだけで社会や環境を変えられるわけではないということを彼も言いたい。

サンティ:ポスターの色はわざと黒にしました。緑とかエコに還元するということではない、ということを表したかったので。そして配置もバラバラにして、デザインのレイアウトは何の役にもたたないということを表しました。このプロジェクトもデザイナーとかイラストレーターの人を招待して、参加するように開いていきました。

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ベラさんの作品です。協力することが一番ということを伝えたかったです。

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次の話題です。これは私たちの写真です。本当の自分、リアルな自分。仕事も大切だけど、仕事からもらった経験のほうが大切だということを思いました。