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InterView03 Santi Lawrachawee[Practical Design Studio] from Bangkok

2013.2.2(Sat.)16:00-17:30

ゲスト
Santi Lawrachawee [Practical Design Studio] from Bangkok
聞き手
後藤哲也[OOO projects/typographics ti:編集長]
原田祐馬[UMA/design farm,typographics ti:クリエイティブディレクター]
通訳
Prapapan Suleeporn

プレゼンテーション

サンティ:こんにちは。今日のテーマは「メディアが私をミックスし、私がメディアをミックスする」です。今まで私が何を見てきたか、それをどう考えてきたか、お話したいと思います。ですので、今日は自分の作品を見せるのではなく、自分の作品から何を見てきたかを重点的に話しますね。例えば、名刺という小さな紙から、旅を考えることができます。

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大学を卒業して就職した事務所ではじめてつくった名刺は、私にとって資格より大切なものになりました。本格的なグラフィックデザイナーになるという決意の証拠だからです。それから、会社を辞めて1995年に自分のスタジオをはじめました。タイではグラフィックデザインがブームのとき。デザイナーたちは、自分の名刺をどれだけお洒落に、格好良くできるか競っていました。その後、アジア経済危機の影響でタイは不況になり、グラフィックデザイン会社の多くが倒産し、私もスタジオを1997年に閉じ、大学で講師を務めることになりました。

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職業を転々とするなかで、名刺の在り方を深く考えるようになり、情報を伝えるという名刺の機能に立ち返り、名刺には私の名前と連絡先だけを記載するようにしました。しかし、そういったシンプルなものへの周囲の反応は薄かったです……。教職に就いている間、教えるだけではなく、またスタジオの仕事をしたいと思い、もう一度スタジオをはじめました。そこで名刺に対する考え方も変わっていったんですね。つまりどういうことかというと、名刺を渡すたび、自分の立場は変わる。印刷所に渡すと私は雇う側ですが、クライアントに渡すとその逆になります。自分の立場もその時々で変わるということです。名刺自体のデザインはというと、色やコップのイラスト位置が異なる名刺を1セットとしていて、1枚1枚配る人によってデザインが変わる仕掛けを施しています。

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後藤:以前インタビューをしたときにお聞きしたのですが、同じ水を渡すだけでも状況で立場が変わるということを表しているそうですね。

サンティ:実は、渡すときは1枚だけ渡したいのですが、いつもお客さんにセットでほしいと言われて困っています(笑)。

後藤:それは断るのですか?

サンティ:いいえ、全部セットであげていますよ。やさしいですから(笑)。話を戻すと、留学したいと思って、スタジオを辞めましたが、結局留学はできませんでした。

後藤:どこの国に留学したいと思っていましたか?

サンティ:イギリスです。奨学金を申し込みましたが、結局通りませんでした。なので、2004年に今の会社「Practical Design Studio」をはじめたんです。ここでも名刺の話をしますが、初期Practical Design Studioの名刺はデザインもバラバラでした。それは、どういうふうに仕事をしていくか模索するために、さまざまな試みをしてみていたからです。名刺は自分を表しますから、名刺をみたら過去の自分や、自分の限界さえもわかります。

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これは現在のスタッフの名刺です。表面はみんな同じですが、裏はみんなバラバラです。スタッフみんなが自由にデザインできるような余白を残しています。私自身、さまざまな職場を経験したことで、デザイナーは自分が介入できるスペースがほしいということに気づきました。

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これから紹介する作品は、私1人でできたものではなく、Practical Design Studioのスタッフが協力してくれて出来上がった作品です。なので、今から紹介するプロジェクトは、私にとっても自分の活動を伝えるための名刺がわりになります。

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最初に紹介するプロジェクトは、タイ人のグラフィックデザイナーを呼んで行ったイベントです。全部で1146人の方が参加を申し込んできました。集まった人たちで一緒に撮った写真もあります。

後藤:以前、インタビューをしたときに出た話なので補足すると、グラフィックデザイナーの職能が知られていない状況にあって、どうやったら企業の人たちに伝えることができるかを考えたとき、デザイナーを紹介するひとつのプロジェクトを考えついたそうです。

サンティ:はじめはPractical Design Studio内部でのプロジェクトでしたが、Facebookでさまざまな人へ広まり、それに加えてデザイナー同士、ほかの業種についてなど知らないことが多くあって、もっと他業種の人と出会えるように、このプロジェクトがはじまりました。主にFacebookを用いて情報を発信しています。

後藤:このプロジェクトでは、どういう効果がありましたか?

サンティ:デザイナーたちがつながり、グラフィック業界が活発になったかなと思います。

原田:タイには、何人ぐらいグラフィックデザイナーがいますか?

サンティ:詳しくはわかりませんが、何万人もいると思います。

後藤:タイのグラフィックデザイナー協会である「ThaiGa」には何人ぐらいいますか?

サンティ:3,000人ぐらいですかね。海外のリストは300人ほどです。

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友だちと「ABCD」という会社のカレンダーをつくったときのことです。デザイナーとして活躍していたら、いつも任されることは同じようなもので、それに飽きてきていたときで、自分の才能をもっとアピールできるような、楽しいことがしたいと、カレンダーのデザインを名乗り出ました。12人のデザイナーが12ヶ月を担当し、それをそれぞれが自分らしくデザインするようにディレクションしました。

後藤:確認なんですが、「ABCD」というのはバンコクデザイン協議会の名称をサンティさん自身がでっちあげたものですか?

サンティ:そうですね。友だちと勝手につくりました。

後藤:日本からすると、もうひとつのニセのバンコクデザイン協議会をつくったわけですね。その12人のデザイナーというのは、Practical Design Studioのスタッフではなくて、お知り合いですか?

サンティ:それぞれ違う事務所の人たちです。

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サンティ:私は、9月を担当しました。時間を表すものを集めて、コラージュしてデザインしたんです。時間を表すものというと、時計だったり、牛乳の賞味期限だったり、さまざまですが、そういうものを集めてバラバラにして、月日を追えるようにデザインしています。ただ、順番になっていない部分もあるんです(笑)。

7月を担当したのは私の友人です。7月はタイで言うと梅雨のはじまり。なので、彼はインクジェットでカレンダーを印刷し、水をつけました。雨で濡らしたようなものにしたかったからです。普通、カレンダーは、ただ日時を教えてくれる役割しか持っていませんが、デザイナーたちからすれば、カレンダーは自分の作品を見せるチャンスのようなものです。

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また、私がアートディレクションを担当したカレンダーもあります。

後藤:これはセルフプロジェクトですか? それとも、どこかから委託されたものでしょうか?

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サンティ:これは、東南アジアの紙会社から依頼され、ひとつ前に話したものはセルフプロジェクトです。これは、紙会社と協力してタイやマレーシア、シンガポールのデザイナーたちの作品を見せるためにつくったものです。予算がたくさんあったので、ひとつ前にお話したものよりも楽しく作業ができたように思います。ただ、今回はカレンダーの役割をきちんと果たすものになっています。

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こちらは、タイのダスト会社のための作品です。2Dの紙を折って立体的になる仕様です。

後藤:見てもらったらわかるんですが、紙に少し筋が入っていて、それを折ることで起き上げることができる。そこで、2Dが3Dになるんですね。

サンティ:右側は、台湾ティーの作品です。紙を破って折ったら、文字になります。「make sense」という作品です。

後藤:「意味を成す」ということですね。

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サンティ:左側は、タイツィンの作品です。これを開けば大きなポスターになります。自分が任される空間から、もっと大きな世界に飛び出してほしいという願いを込めています。普段、人は近い距離でカレンダーを見ますが、このカレンダーを見るときはもっと遠くから見ないといけません。ポスターにはQRコードが記載されており、携帯電話でQRコードを開くと映像作品につながり、カレンダーからまた新しい世界へと移ることができます。

シンガポールのアップオウス社から依頼を受けた作品です。シンガポールからのクリス・リーさんの作品もなかに入っています。

原田:友だちと仕事をするときとキュレーションという立場でプロジェクトを進めているときの視点は変わりますか?

サンティ:よく知っている顔の人はいますが、今回はクライアントが別でいるので、友だちだからという関係でもなく仕事ができましたね。

後藤:タイ、マレーシア、シンガポールの人たちとは日頃から知り合いだったのでしょうか? どこか知り合える環境があるんですか?

サンティ:仕事で知り合うことが多いですね。クライアントとなる会社の支社がシンガポールやタイにあり、それが知り合うきっかけになりました。それもあって自分が「井の中の蛙」だと感じていたので、もっと世界を知りたいということから、まずは自分の指針となるマニフェストを考えようと思いました。