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InterView01 Chris Lee[Asylum] from Singapore

質疑応答

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後藤:そろそろ時間なのですが、会場から質問を受けたいと思います。

質問者1:クリスさんが若い頃に影響を受けたデザイナーは国内のデザイナーですか? 国外のデザイナーでしょうか?

クリス:はい。私がシンガポールで育った頃というのは、イギリスからの影響がとても強かったんです。シンガポールは、文化が無い国なので、デザイナーもミュージシャンもイギリス一色でした。ただ、私たちがデザイナーとして活動を始める頃には、日本のデザイナーも注目されていましたね。

シンガポールのデザインは、個性があるが、シンガポールの文化は、さまざまな国の文化がミックスされているように思います。ということで、シンガポールのデザイン作品を見ていただくと、みんなそれぞれ個性がある。バラバラの印象を受けるかもしれません。だけど、文化が無い国だからこそ、いろんなところから吸収できるのだと思います。

後藤:今の質問で、僕も追加で聞きたいことがあります。アジア7都市をまわってみて思ったのが、すごく巨匠級なデザイナーたちではなくて、同世代の人たちや少し若い世代とお話してきました。だけど、その都市ごとの違いが見えるような、すごくローカルなデザインというものは、どの都市でもあまり出会うことはありませんでした。もちろん、大阪も含めてなんですけど。インターネットが発達している状況下において、いかにローカルやオリジナルなデザインを思考するかはひとつのテーマだと思うのですが、ローカルなデザインについて、どう考えていくのか聞いてみたいです。

クリス:まず、タイのデザイナーは、非常にアイデンティティが強いので、タイの方からまずお答えいただいて、香港、そして私が最後というのが良いと思います。

サンティ:タイは、やはり伝統の長い国なので、そういった文化があるのは確かです。ただ、それ1色ではなくて、やはりマスコミを通じて、アメリカの文化がいろいろ入ってきて、文化はミックスしています。私も、タイと言いながら、家系は中国系ですし、そういった要素も持っています。

サンティ:最近のバンコクの人々は、非常にミックスした多文化圏のなかで成長していると思います。ただ、私たちは、学校では伝統的な文化を学びます。そうすると、気づかぬうちに、自国とさまざまな国の文化がミックスしていく。例えば、タイポグラフィーを学ぶときも、西洋の知識を持った先生から英語を学ぶわけですが、その英語には「タイアルファベット」をつける。そういうところから、デザインとして繁栄されるのかもしれません。

ジェイヴィン:香港に関しては、僕が生まれて初めの20年間は、まったく英国政府領土で、その後は、ご存知のとおり、中国返還後の16年なんです。だから思春期を過ごした時期は、英国の文化から最も強い影響を受けました。これは、音楽も映画、あらゆる文化に言えます。しかし、香港では、バイリンガルということも非常に大事なことで、中国語と英語の両方が常に重要視されるんです。

その影響もあって、おそらく1970、80年代は、香港のデザイナーにおける、最初のゴールデン時代だったと思います。東洋と西洋の両方の要素が入っていて非常に良いバランスでしたし、本当の意味で国際的なものが生まれていました。同時にイギリス政府が、その当時、海外から香港への投資を強く誘致したために、いろいろなビジネスチャンスも生まれ、デザイナーが経験を豊かにすることができた時代でした。

残念ながら、僕は、その時はデザイナーではありませんでしたが(笑)。僕がデザイナーになった年は、香港が中国に返還された1年後だったので、育った環境は全然違う。そして、タイポグラフィーも同様で、英語がメインできっちりとバランスが取れていたんですが、それよりも焦点を中国語にするよう政府の方針が変わってきました。また、香港で話す中国語は、もともとは広東語だったんですが、広東語は北京政府からすると方言なんですね。そうすると、北京の中国語が主流に変わっていった。ということで、香港の若い世代が文化そのものをどうでもいいという思考に変わっていったように感じます。それは、どんどん変わっていくからです。また、さきほどもインターネット技術の到来ということで、すべてアクセスできる。そう考えると、すべてがミックスの時代になることも納得できます。

クリス:シンガポールという国は、私より5つ年上という若い国で、まだまだ学習途上の国です。

後藤:ありがとうございます。各都市にものすごくローカルなデザインが見えないという話に、少し補足したいと思います。グローバルなスタイルとして、同時期に同じような情報を得ることができるので、同じような表現はしている。全然違うものをしているのではなくて、ちゃんと共感性があるということで、違いを見いだせないと思ったんです。まさに、みなさんがおっしゃった通りなんですね。

ジェイヴィンが連載を担当している『DESIGN 360°』という中国の雑誌で、今回の展示を特集した冊子があります。そのなかでインタビューを受けたのですが、「各都市でのデザインの違いがあるか」という質問があったんです。そこで、僕は、「タイポグラフィーが、各国、各都市のデザインの違いを出しているように感じる」とお答えしたんですね。

タイと韓国に関しては、文字自体が違うというのもありますし、香港や北京、深圳に関しても、中国語だけど、中国語へのアプローチが異なる。タイポグラフィーの部分で、そういった差異はあると思います。今回の展覧会では、それを超えたところで、お互いデザイナーとしての共感性を持って、また次の関係をつないでいけるようなことができたらいいなと考えています。

原田:表面上、表現的な違いは、あまりないという話だったんですけど、実際に僕たちがアジアを回って感じたことは、社会と向き合って、デザインしている人が多いこと。日本も問題先進国だと思うんですけど、香港も超問題先進国状態ですよね。きっとシンガポールやタイも同じような状況があると思います。そのなかで、どのようにデザイナーが社会と向き合ってデザイン、自分の職能を活かすかということがしっかり実践されていることを実感しました。だけど、どちらかというと、その姿勢は、人それぞれ、国それぞれなんじゃないかなと思いました。

後藤:時間も来ましたので、このあたりで締めたいと思います。クリス・リーさん、多忙の中、実は体調も崩されているなか、長い時間トークに付き合ってくれてありがとうございました。

クリス:ありがとうございました。

編集記録
editorial studio MUESUM(多田智美/坂本美幸/島智和)、仲村健太郎
写真記録
Cahier (多々良直治)