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InterView01 Chris Lee[Asylum] from Singapore

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ジェイヴィン:香港は、ご存知のとおり、商業の街なので、非常に商業的な仕事が多いです。なかでも、香港の産業は、金融や不動産投資に依存しています。しかし、ここ過去10年間、クリエイティブな産業に焦点を当てるようになってきました。国が運営している香港デザインセンターもあります。ただ、現在は、さきほどお話されていた状況と非常に似ていて、挑戦してみたいという若い世代がたくさん出てきました。しかし、シンガポールのTHE DESIGN SOCIETYのようなものはありませんが、デザイナーによっては個展を開催したり、雑誌を発行したり、そういった小規模な活動は増えています。だけど、スペースが無いし、寄付がなかなか集まらないという現状はありますね。

後藤:大阪でも、香港でも、シンガポールでも、似たような状況が起きているんだと思います。先日、仕事でシンガポールに行ったときに、展示を見せてもらったのですが、働き方自体がすごくおもしろくて、単に商業的に成功しているだけでなくて、どうキャリアを積んでいくかということに対する意識が高い。

クリスは、僕と2歳くらいしか変わらないのに、いろんなことをしていて、すごく感銘を受けています。例えば、何年か働いたら、1年休むというようなサバティカル休暇をとることを考えていたり。サグマイスターをはじめ、デザイナーでも実践している人はいますが、憧れるけどなかなか実行には移せなくて……。

また、会社が大きくなってきたら、エージェンシーに買収してもらって、自分自身の働き方を考え直すという構想などお聞きしたことがあるのですが、会社経営についての考え方や次のステップについて考えていること、そういう考えに至ったきっかけを教えていただければと思います。

クリス:私は、常に神経質で混乱した人間なんです。長期休暇をとることも、ステファン・サグマイスターに教えてもらいました。やはり、働いたら長期休暇に実験的なことをすると良いと言われました。1995年からデザイナーになったのですが、40歳にこれから何をすべきか?ということを考えるようになりました。

先日、何もしないためにニューヨークに行きました。ニューヨークの公園で何もしないで鳥を眺めて、アートギャラリーにも行きます。そうすると、デザイナーになりたいと思った時の気持ちがよみがえってくるんですよね。何もしないままニューヨークにいるのですが、とても私には良い時間なんです。だから、4、5年しっかり働いたら、休む。普通の人は退職するのですが、私は分割して退職休暇を取っているような感覚ですね(笑)。

今回も上海、ソウル、大阪、その後は北京に行って……、いまは、仕事の5、6割が国外のプロジェクトなんです。日々そういうことを繰り返すので、プロジェクトも課題も大きくなっていき、「なぜデザイナーになったのか?」がわからなくなる。だからこそ、サバティカルな休暇が必要なんですね。もう一度、原点に返って、「自分が何をしたかったのか」をサバティカル休暇で考える。会社は、まだ売るつもりはありませんが、将来は、「1C」というデザインファームをつくりたいなと考えています。1色だけでデザインする事務所です。

後藤:ソサエティを設立したり、ショップを運営したり、サバティカル休暇をとったり……、クリスのような活動や働き方は、シンガポールのデザイナーに影響を与えているように思いますか?

クリス:最近の世代は、私たちの世代とは、働き方に対する考えが異なるようです。若い世代は仕事とプライベートのバランスをとり、週間に5日にしか仕事をしない、むちゃくちゃに働くことはしない。そして、すぐフリーランスになります。デザインのコンペに出すこともあまり無いようですし。ただ、デザインがしたい気持ちはあるのだけれど、自分のパーソナルな時間は損なわないように考えているようです。香港ではどうですか?

ジェイヴィン:本当によく似ていると思います。香港におけるデザインの歴史は、40年ほどなんですね。私たちの若い頃は、巨匠デザイナーに憧れ、そこで働くことが目標でした。しかし、ちょうど2000年頃、テクノロジーとしてインターネットが入ってきて、デザイナーたちは、自分でメディアを持つことができるようになりました。

そうなると、簡単にスタジオをつくることができ、フリーランスの活動をする人が多くなってきます。また、香港は、プレッシャーのかかる街なんです。そこで育った人たちは、最初から「仕事半分、人生半分」と考えるようになるようですね。具体的には、1994年生まれ、1980年後半に生まれた人たちあたりから世代が変わってきているように思います。

原田:駆け足で働く、ダメな日本人なんですけど(笑)。僕だけかもしれないんですが……。若いデザイナーが「生活半分、仕事半分」ということが実現できているかと聞かれると、そんなことは無いかなと思いました。後藤さん、そのあたりどうですか?

後藤:僕自身は、70年代生まれです。ワークライフバランスを考えようとしているけど、上手くいかないダメなパターンなんですね。今のお話を聞いていて、ゆとり世代についての問題については、日本だけではなくて、シンガポールや香港でも起きていることなのかもしれないなと思いました。今回、ジェイヴィンだけでなく、タイからサンティさんもオープニングに駆けつけてくれました。彼にも、少しタイの状況を伺うことができたらと思います。

サンティ:タイの現状も、同じだと思います。タイの若者も「仕事半分、人生半分」という考え方に移ってきているように思います。先ほど、ジェイヴィンさんの話もありましたが、1980年代あたりの生まれから変わってきています。ただ、私も昔はよく働いていましたが、今は半々でやっているつもりです。

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後藤:これまでの流れと全然違う質問になってしまって申し訳ないのですが、さきほどクリスが、Asylumを売却した後は、自分の会社として、「1C」をやりたいと話していました。今回の展示を見ていても、モノクロのデザインが多い。シンガポールって、トロピカルなイメージもありますよね。そこを意識して、モノクロのデザインをしているのでしょうか? その理由について聞かせていただけますか?

クリス:私の場合、関わっているプロジェクトも、世の中も、どんどん複雑になっているんですね。もし、次にデザイナーとして活動するならば、純粋な、シンプルなデザインをしたいと考えたわけです。色も悩むことなく、1色だけにしてみたい。純粋な感覚でデザインをしたいんです。

原田:今は、不純な感じなんですか(笑)?

クリス:いえ、全然(笑)。

(会場笑)

原田:さきほどの後藤さんの質問で、シンガポールのデザイン自体、モノクロが多いということに対してはどうお考えですか?

クリス:シンガポールに、モノクロのデザインが多いとは思わないのですが……。

後藤:僕たちがデザイナーを選んでいるから?

クリス:より優秀なデザイナーを選定しているので、シンプルな答えが出ているのだと思います。