IMG_3568_2

InterView01 Chris Lee[Asylum] from Singapore

後藤:さきほどもお話したのですが、大阪とシンガポールは、経済環境やデザイナーを取り巻く環境が近いと感じています。ただ、同じような環境にありますが、クリスは経済的に成功している印象がある。個人的には、そこに一番関心があるのですが……(笑)。そういった状況のなかで、どのようにして仕事や状況をつくり出していくのかについてお聞きしたいと思います。

また、今回dddでの展示は、展覧会をつくりあげていく過程も、海外のデザイナーと一緒に共有していきたいという想いがありました。そこで、クリスにも展示構成に協力してもらって、僕たちが訪れた各7都市の展示棚+大阪用に空洞の棚を用意しました。これらの棚の編集を各デザイナーにお願いしたのですが、彼には、全体のプランニング、デザインにも携わってもらいました。ほとんどボランティアという形でしたが……(笑)。日本で、またdddギャラリーの空間で、デザインできるならやりたいということで協力してもらいました。

僕が初めてクリスと出会った頃のスタジオと、現在のスタジオでは全然印象が異なります。最初のスタジオは、かなり親近感があったのですが、そのときに仕掛けていたプロジェクトが拡大していって、次に会ったときには、実際にお店をスタートしていました。そこから、どんどんイベントを企画したり、グッズをつくったりと、活動が展開していったというお話は、すごく共感できます。実際に、そういった前例の無いシンガポールという場所で、スタートするとき、上手くいくという手応えはありましたか? それとも手探り状態でのスタートだったのか、そのあたりのお話をお伺いしたいです。

クリス:Asylumをスタートする前は、広告代理店に務めていました。当初、最も大切だったことは、財政的に安定する仕事をすることでした。最初から夢を見て、おもしろいことをしようとは思ってはいなかったんです。おもしろいけれど、ちゃんと会社として成立できるように頑張ろうと考えていましたね。

シンガポールの特色なのかもしれませんが、ある意味、ひどい仕事をしながら儲けることができる国なんですね。どこかに仕事が転がっていないか、みんなチャンスを狙って、探っている。だから、コンスタントに出て行くとことが大切なんです。だけど、シンガポールには、音楽産業も映画産業もなく、そして文化産業もない。そういう意味では、非常にチャンスが限定的な国でもあります。そこで、私は、自らのプロジェクトをスタートさせることになりました。だけど、それは、最初に財政的な基盤をつくることができたからこそ、そういった自主プロジェクトへと移行することができたと思います。もちろん、今もバランスは取っていますよ。

IMG_3528

原田:パーソナルプロジェクトにおいても、経済的にも成立しているようなプロジェクトがたくさんあると思います。例えば、チョコレートのショップやセレクトショップとか。だけど、大阪におけるパーソナルプロジェクトで言えば、自転車操業的なものが多いように思うんですね。例えば、後藤さんのフリーペーパーも自腹で発行しているし、それで直接的に儲かるものではない。シンガポールでは、どうですか? 実は、最初はそうだったんだよっていう話などあるのかなと。

クリス:パーソナルプロジェクトやショップは、経済的にはギリギリですね。シンガポールにも、雑誌を発行している人や展覧会を企画する人など、パーソナルプロジェクトをやっている人はいっぱいいます。私が運営しているショップも、ショップという名前がついていますが、展示スペースでもあり、トークスペースなので、販売するプロダクトはあまり置いていません。私は、クリエイティビティを訴える場として、あのスペースをつくりました。ただ、私が経済面で考えたことは、事務所と同じ場所で行うということ。そうすると、同じ物件なので、家賃がかかりません。やはり、シンガポールでも、自転車操業的なプロジェクトをしているデザイナーは多いですね。

原田:お話を聞いていて、表現としてのパーソナルプロジェクトではなく、シンガポールの状況を良くするためのプロジェクトが多い印象を受けました。そのあたりについては、どのようにお考えですか?

クリス:私たちは、先輩がいない世代なんです。何もないところから始めると、必然的にクリエイティビティを持った人たちが引き寄せられるというか、そういったメンバーが集まるんですね。4年前、デザイナーの状況をよくするための組織として「THE DESIGN SOCIETY」を立ち上げました。です。カンファレンスやレクチャーシリーズをはじめ、カジュアルなセッションを行っています。学校にも足を運び、レクチャーをしていますし、1年に2回雑誌も発行しています。

後藤:では、原田さんの質問に加えて、またクリスの話を踏まえて、質問したいと思います。傍目に見ていると、シンガポールは経済も良さそうだし、状況はすごく良くなっているように見えます。そんななか、THE DESIGN SOCIETYをはじめようと思ったきっかけについて聞かせてください。なにか危機感を感じて始められたのか、それとも友だちで盛り上がったというノリの感覚なのか……。

クリス:The EXCOのメンバーは、友人ばかりです。みんなで集まって、みんなでいろいろなことを話したり、飲んでバカなことをしたりしていたのですが、そのうち、ここで閉じているだけではなく、何かはじめようという話になったんです。やはり、このままでは、自分たちの世代だけで終わって、次の世代が見えてこないんじゃないかという話になりました。そうでないと、気がついたら年をとって……と。政府の補助金なしで、1人2,000シンガポールドル(14万)ずつ出し合って立ち上げました。ぜひ寄付をお願いします(笑)。

原田:僕たちがやっているDESIGNEASTも毎年15万円ずつ集めて、自分たちでやっています。すごく似ていますね。

クリス:Good Luck(笑)!

原田:The EXCOのメンバーは、クリエイティブディレクターという肩書きが多いですが、実際はどういう仕事をされているんですか? グラフィックデザイナー?

クリス:そうですね。ヴィジュアルコミュニケーションのイラスト、写真など、ビジュアルのコミュニケーションをしている人たちの集まりです。インテリアデザインの人はいません。実は、シンガポールには、デザインアソシエーションという協会があって、そこには、ファッションやインテリアデザイン、グラフックも含まれているのですが、あまりに巨大な組織なので、ビジュアルコミュニケーションに特化した組織を別につくりました。

原田:ジェイヴィンにもお聞きしてみたいのですが、香港でも、クリスのように、自分たちでプロジェクトや組織を立ち上げるような動きがあるのでしょうか?